COCONUTS NAKAMURA

2020/01/11 16:36

サワディーカ、ココナッツ・ナカムラです。


ココナッツ・ナカムラに関してはたくさんのストーリーがあるので、誕生以前(BC : Before Coconuts Nakamura)から誕生後(AC : After Coconuts Nakamura ) そして現在(almost famous)から未来(world famous)までを書き記していこうと思います。夢は大きく!

と、言うことでまずBC1。2016年の2月頃に私たち夫婦はタイへと移住したものの、思った以上に物事がスムーズに進まず、すごく時間に余裕がありました。(要は、ものすごく暇!)暇を持て余した私たちは何をしようかと話し合い、お互い食関係の仕事をしていたし興味もあったので、色々と見て回ることからはじめました。本格的なクッキングクラスへも通ったし、食べる発酵茶「ミアン」を見にチェンライの山岳民族の元を訪れたり、発酵麺「カノムジン」や発酵ソーセージ「ネーム」を作っている人たちのところ、名だたるタイ料理シェフのところに食べに行き、そして塩田などもいくつか見に行きました。そんな時、伝統的なものをアップデートしたお菓子を作ったらどうかというアイディアが出ました。その後調べていくうちに、地域ごとに特産の「お菓子」があるらしいいうことがわかり、まずテーマを「お菓子」に設定し旅をすることに。

2016年10月に訪れたのは、バンコクから車で2時間ちょっと行ったところの、ペッチャブリー県。まずは、この辺り名産のお菓子を聴き込み、集めて回ります。カスタードプリンで有名なお店や、あまーい卵黄のお菓子フォイトーンで有名なお店、オウギヤシの実、ルーグターンなどなど。そして、タイでは「カオニャオ・マムアン」と呼ばれる、ココナッツミルクで甘く炊いた餅米とマンゴーを一緒に食べるデザートがあるのですが、それの最高峰との呼び声の高いおばあちゃんの店「MaeNongNuchHuaHin」(フォイトーンの店と共にペッチャブリーの隣の県にあります)にも寄ってみました。ペッチャブリーって、国道の脇に大きなお菓子屋さんがいくつも並ぶスイーツ県だったのです!

写真;皿右下から時計回り;カスタードプリン、フォイトーン、なんのパイか忘れた、ねっとりしたもの、パームシュガー蒸しパン、オウギヤシの実、皿中央はドライバナナ、皿外左上はパームシュガー

写真;カオニャオ・マムアン(右は餅米に甘しょっぱいココナッツミルクがかかっている。)


写真;カオニャオ・マムアンの達人ばーちゃん。

それもそのはず、どうやらこの県は「パームシュガー」と呼ばれるねっとりした茶色いペースト状の甘味料の有名な産地だそう。砂糖はタイ語で「ナムターン」というのですが、ターンはオウギヤシという意味で、ブリキの一斗缶に入れられて売られているほどタイでは庶民的なもの。でも、やはりサトウキビからとれる砂糖の方が安価で安定している(これに関しては後述)ので、現在は料理にも普通の砂糖が使われることが多いけれど、やはりこのパームシュガーを使うと、コクや香りが豊かになるのです。


パームシュガーって、日本にいると全然馴染みがないのだけれど、オウギヤシの花序液からできてます。(いづれ書きますが、ココナッツシュガー(ココヤシからとれる)とはまた別もの!)20m以上あるオウギヤシの木の先端にちょろっと出た芽のような花序を切って、木の道具で挟んで揉み解し、切り口に竹筒をつけて落ちてくる汁をとり、その汁を煮詰めてできたもの。食べてみると、キャラメルのようなほろ苦さと甘さ、なんとなく頭の後ろの方にトウモロコシがひょこっと顔を出した後すっと甘味が消える。う、うまい、、、、!


たまたまその時に作っていた、パームシュガーとヤシの天然酵母を使って作った蒸しパンも食べさせてもらったけれど、パームシュガーの味の複雑さとムチっと食感が感激の美味しさを産み出し、素朴で単純な材料からできているのにその素材の良さと新鮮さで想像を超える一品。ただ、やはり日持ちするものでもないし、焼き立てが感動的だから商品化には向かないよねえ。


実は、パームシュガー自体、現在100%ピュアな本物はバンコクで見つけることは相当困難です。というのも、オウギヤシはずーーーっと上へ上へと成長し続けるので、花序がとれる場所もどんどん高い位置になっていきます。(想像の通り、切るとそのヤシはもう使えなくなるから、新しいヤシを植えながら伐採していかないといけない)しかも、竹でできた梯子を登っての作業はとても大変なうえ、それでも甘味調味料、値段はかなり安く報われない。需要はあるのにやりたい人がいないから、市場で出回っている安いパームシュガーはたいてい焦がして色をつけた砂糖やデンプン、またはパームシュガーに砂糖を混ぜたものがほとんど。(ココナッツシュガーもそうだけど、分子が安定していないため形状が落ち着かず、出回っているほぼ全てのパームシュガーやココナッツシュガーは形状を安定させるためと甘味をプラスするために砂糖が混ぜられている)。その上、茶色い色も日にちとともにどんどん色がより茶色く変色していくから、工業製品のような安定したものを求める人からはクレームがくることも多いそう。ものすごく美味しいけれど、確かに売るのも作るのも相当大変そうだなあと思いながら、パームシュガーファームを後にしました。

ココナッツ・ナカムラの旅は続く。